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捕鯨論説・小説・絵本のサイト/クジラを食べたかったネコ

── 日本発の捕鯨問題情報サイト ──

(初出:2009/5)

捕鯨推進は日本の外交プライオリティ№1!?
 ──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態──

(1)水産ODA──アナクロな札束外交の象徴
(2)捕鯨支持国とそれ以外の国との間で見られる顕著な〝援助格差〟
(3)日本に捕鯨支持という〝踏絵〟を踏まされる開発途上国
(4)捕鯨援助で本当に利益を得ているのは誰か
(5)補足:各捕鯨支持国の解説

(4)捕鯨援助で本当に利益を得ているのは誰か 
■天下り団体と水産ODAの密接な関係

 海外水産コンサルタンツ協会(OFCA)という社団法人がある。水産ODAを受注するコンサル、ゼネコン、商社、その他機材メーカー等で作る関連業界団体である。会長の森川貫氏は元水産庁研究開発部研究課長。もう1人、財団法人海外漁業協力財団(OFCF)の常務理事も兼任する粂知文氏は元水産庁資源管理部審議官。要するに、水産庁OBの天下り先である。役員報酬は年額1,200万円。他の理事は、副会長のオーバーシーズ・アグロフィッシャリーズ・コンサルタンツの石本惠生取締役を始め、協会に加盟している企業の役員が6名。後は自然環境研究センターという外郭団体の理事長が入っている。OFCAの活動内容には、水産庁からの補助金による調査事業のほか、捕鯨に関する勉強会なども含まれている。国からの委託費・補助金がOFCAの収入決算額に占める割合は47%に上り、農水省所管の外郭団体の中でも特に多い(会計検査院報告)。

「OFCAのホームページ」
「社団法人海外水産コンサルタンツ協会 会員代表者名簿」(農林水産省)

 OFCFも長年水産ODAの橋渡しをしてきた外郭団体であり、農水省による補助や委託を受けて各種の調査事業などを行っている。もっとも、一部の業務内容はOFCAと重複しているようにも思われる。事業の中には資金の貸付業務も含まれ、調査捕鯨の実施主体である日本鯨類研究所に対し21億円の無利子融資を供与している。海外漁業交流促進として、IWCやワシントン条約(CITES)締約国会議にまで首を突っ込んでいるほか、捕鯨支持国の漁業担当大臣など政府関係者を毎年のように日本に招聘している。同団体への天下り官僚は4人、OFCAの理事を兼任する粂氏のほか、元水産庁長官の田原文夫理事長、元水産庁次長の石川賢廣理事の3人が水産庁OB、残る1人の邊見敬三郎専務理事はなぜか財務省(旧大蔵省)出身の元関東財務局長だが、他にも住宅金融公庫の理事など公益法人の役員を転々としている。受け取った退職金の総額はいくらになるだろうか?

「OFCFのホームページ」

 一方、(財)自然環境研究センターの方は環境分野の外郭団体のように見えるが、理事長の多紀保彦氏は東京水産大学の名誉教授である。こちらの財団の役員の顔ぶれには、環境省と農水省からの天下り官僚がそれぞれ2名ずつ含まれ、また捕鯨関連著作のある民俗学者秋道智彌氏の名もある。どうやら有害鳥獣駆除に関わる調査を行う団体の模様。クジラに比べると、国民の間でもまだ抵抗感情の根強い陸上の野生動物の捕殺・利用を徐々に推進することで、側面から商業捕鯨をバックアップする役目を担っているのだろうか? ほかにOFCAとの接点が見当たらない。

「自然環境研究センターのホームページ」

表6:水産ODA事業調達状況

 <表6>は、1998年から2008年までの11年間に水産ODA事業を受注した企業の一覧である。水色で着色したのはOFCAの会員企業である。薄い水色は、OFCAが農水省から得た補助金で行っている海外漁業開発のための調査・派遣事業に、会員企業と共に参加している企業である。※印は現在倒産(吸収合併含む)・経営破綻状態にあるか、関連事業から撤退している企業である。並び順は、上からコンサル、商社、ゼネコン、その他で、それぞれOFCA会員企業を上位に置き、さらに受注件数でソートしてある。

「調達状況」(外務省ODAホームページ) 

 ベトナムODA汚職で役員が逮捕されたPCIや((1)参照)、小沢民主党代表や二階経産相への献金問題で揺れている西松建設も含まれている。西松建設は3月から3ヶ月間、不正行為を理由にJICAから指名停止処分を受けている。西松建設のほかにも、2006年の防衛施設庁談合事件で営業停止等の処分を受けた多くのゼネコンがOFCAの会員となり、水産ODA事業を手がけている
 水産ODA事業の受注者の中には、遠洋捕鯨三大手の一角を占めていた極洋も含まれている。極洋も日本水産、マルハニチロと同様鯨肉販売事業からは撤退し、商業捕鯨再参入も否定しているはずだが、捕鯨と密接に関わりのある水産ODAの受注実績が2005年以降途絶えているのも、やはり外目を気にしてのことだろうか? 日本水産マルハ(現マルハニチロホールディングス)も、OFCAの水産庁補助事業の方には参加した実績がある。法人の登記記録までチェックできていないため、OFCA会員のコンサル企業・建設企業と旧捕鯨企業ないし関連水産・食品企業との間に資本関係等があるかどうかは不明である。
 受注件数で見ると、OFCAの会員企業が110件と6割を占めている。共同企業体の中にも含まれるだろうから、ほぼ3分の2と見ていいだろう。関係者が同協会の役員を務める企業は受注件数が特に多い。
 ここで、ODAの調達がどのように行われるかざっと解説しておこう。
 典型的な日本のヒモ付き援助の問題については(1)で触れたが、日本企業の受注率が下がっているのは円借款事業や技術協力の話である。無償資金協力の資材・役務等については、コンサルタントも建設会社も最初から日本企業に限られている
 ODAの流れは、まず被援助国の要請に従いJICAがコンサル業者に事前調査を委託する。審査を通った案件は、日本と相手国が合意し交換公文に署名された後、コンサルによる基本設計、詳細設計を経て開発本体の事業が進められる。JICAによる事前調査と基本設計の実施業者の選定は、登録業者のプロポーザル審査方式だが、詳細設計は基本設計からの一貫性を確保するという理由で、JICAが基本設計を請け負ったのと同じコンサルを被援助国に推薦するため、ほぼ100%同一業者の随意契約となる。コンサルの設計・積算に基づき調達仕様が定められ、開発本体のゼネコン向け一般競争入札が行われる。発注・契約は、形式上日本政府に資金を贈与された開発途上国政府が行うことになっているが、調達資機材の規格等から広告媒体(主に業界紙)の選定に至るまで、取り仕切るのは実質コンサルである。入札場所もコンサル企業の会議室で行われる場合が多い。予定価格も被援助国が決めることになっているが、コンサルの詳細な助言なしに算定できるはずもない。JICAと外務省は価格決定プロセスについては一切関知しない。

「調達・契約業務の概要:調達情報」(JICA) 

 2002年に会計検査院が一般無償及び水産ODAの入札制度について検査している。報告によれば、まずコンサルについては、契約の半数近くが上位10位の12社によって占められていた。本体の入札参加者数は平均2.5社で、3社以内が9割以上、2社が44%、1社のみも15%ある。受注実績の多い上位10位11社が契約の6割近く(契約金額では5割弱)を占めていた。さらに、契約金額が予定価格の90%以上というケースが9割以上に上った(2002年当時は予定価格が公表されていなかったため、ODAの供与限度額からコンサル契約料を差し引いて会計検査院が算出)。会計検査院は「効率的、効果的な実施及び透明性の向上を求める」との所見を述べている。 

「無償資金協力のうち一般プロジェクト無償及び水産無償における施設の建設や資機材の調達等の手続及び契約状況について」(会計検査院平成14年度決算検査報告)

表7:水産ODA事業入札・応札結果(2005-2008)

 そこで<表7>をご覧いただきたい。<表6>と同じく外務省の調達状況の2005年度から2008年度にかけての水産ODA案件の入札結果を一覧にしたものである。●が実際に落札した企業。OFCA会員企業(水色の部分)は応札した12社中9社である。落札率の赤字は応札価格が予定価格の上下5%以内、紫字は10%以内に収まっているものである。
 入札に応じる企業は16件のうち7件が1社のみ、7件が2社、残り2件が3社。平均1.7社である。上記した2002年報告の2.5社、あるいは2007年報告の5年間の技術協力(国内調達)の平均入札参加者数3.8社と比べると、ずいぶん参加者が少ない。
 それにしても、応札価格の的中ぶりは見事という他はない。初回入札でなぜ応札者全部がここまでスレスレの札を入れてくるのだろう? 4年間の平均落札率は98.2%、不落随契を抜いても97.4%である。最近の2年間に限れば、平均99.0%(不落随契除き98.6%)である。実にピッタリと寄せてくる。各企業の契約担当者の方々は、きっと車庫入れが得意に違いない。予知能力でもあるのではあるまいか?  国内の自治体等の一般的な物品調達や公共工事の入札であれば、落札価格が予定価格の9割以上というだけでも首を捻るところだが、平均99%ともなればまず談合を疑うのが普通ではないか。
 水産ODA以外の他のODA案件についても、入札の中味は似たようなものなのだろうか? 上掲の会計検査院の2002年の報告では、落札率98%以上の件数は65%となっている。だが、<表7>に示すとおり水産ODAにおいては、4年間16件の入札件数のうち落札率98%以下は2件どまりで、98%以上が全体の87.5%を占める。札の数で見れば89.2%が予定価格の98%以上である。また、2007年の報告では、一般プロジェクト無償における平均落札率は96.8%(施設)及び85.8%(資機材)である。技術協力の平均落札率も91.5%(施設・現地)、90.3%(資機材・現地)及び83.7%(資機材・国内)である。この数字の開きは、納税者にとって決して小さなものではない。水産ODAは、他のODA案件と比べても、少ない入札参加者や異常に高い落札率など、透明性・競争性の欠如が一層強く疑われるものとなっているのである。
 調査・設計を引き受け事実上価格決定権を握るコンサルと、事業本体を受注する建設企業の多くが、所轄官庁の天下りOBが役員を務める業界団体の会員となり、リレーションを築いて情報を共有しているとすれば、公募案件といっても形だけの儀式的入札で、各業者に仕事が割り振られていく出来レースと傍目に映るのは仕方があるまい。

「政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等について」(会計検査院平成19年度決算検査報告)

■もうひとつの捕鯨援助──OFCFの水産技術協力

 水産ODAは金額が大きく目につきやすいが、厄介なのはもう一つの無償援助である水産分野の技術協力である。他の技術協力はJICAが調達しているのだが、水産分野のみ上掲の水産庁の天下り団体OFCFが仕切っている
 ここでもう一度2007年の会計検査院の報告に着目してほしい。2003年から2007年までの技術協力の調達状況を、JICAとOFCFのそれぞれについてもチェックした結果が掲載されている。その中で、OFCFの調達には競争性・透明性に関してJICAとは比べ物にならないほど問題が多々あることが明らかにされた。
 まず、JICAの技術協力(資機材のみ。施設は原則現地調達)は現地調達が8割に上るのに対し、OFCFの技術協力は167件のうちの101件が国内調達で、金額で見ると85%が国内である。受注先の多くはOFCAの会員企業であろう。水産ODAと同様、水産技術協力も間違いなくヒモ付きである。会計検査院の勧告を受けて、OFCFも昨年の7月にやっと入札広告をホームページで掲載するようになったが、開示されている内容の質と量はJICAとは雲泥の差である。
 次に、契約方式は、施設の建設が全9件のうち1件が指名競争入札で残りがすべて随契、資機材調達が全57件のうち一般競争入札が2件で残り55件は全部随契であった。とんでもない高率である。随契の場合は予定価格の設定を省略できるとし、さらにその場合積算資料や見積書まで省略可にしてしまい、〝証拠〟が何も残らないよう実にうまく出来ている。随契理由がまたふるっている。商習慣など調達する環境が違うとか、駐在員しかいないから入札会が実施できないとか、緊急を要するだのという理由で、「信頼できる業者」との随意契約に頼らざるを得ないのだという説明である。これでは、何のために金額の上限に基づく規定を定めた財団の会計規程があるのかさっぱりわからない。
 落札率は、1件のみの施設は92%、資機材の調達は5年平均で89%だが、年々上がって2007年では95.95%である。一方、JICAの方は、資機材の国内調達が84%、現地調達が90%である。これについてOFCF側は、「納入先が島なので不便で金がかかるから業者の人気がない」といった理由を掲げている。予算が減り透明性・競争性の確保に支障を来たしているのであれば、それこそ調達業務はJICAに統合すべきだろう。
 ここでいう現地の「信頼できる業者」とは、ひょっとして、IWCや水産ODAを担当する役人・政治家の親族や関係者が経営する会社だったりしないだろうか?

■薬にならないお手盛り事業評価

 ODA事業の評価はJICAが実施しているが、最も肝心な第三者による事後評価は残念ながら件数が少ない。カリコムと大洋州の捕鯨支持国では技術協力プロジェクトも含め1件もない。水産ODAで事後評価報告が上がっているのは、IWCに加盟していないザンビアのみである。内容を見ると、5.3億円をかけた養殖場拡充計画で、1996年に実施されたものだが、予算やスタッフが大幅に削減され、94年に74万尾だった種苗生産数は2001年に5万400尾に減少、養殖普及という所期の目標達成には至っていない。他の水産ODA案件に対しても懸念を覚えるが、少なくともJICAの事業評価報告は外部専門家による厳しい検証の体をなしており、フォローアップ状況まできちんと記載されている。

「案件別事後評価要約表」(JICA)

 対照的なのがOFCFの事業評価である。評価を行っているのは有識者とのことだが、主に日本の水産学者である。捕鯨問題に関する著作のある元朝日新聞編集委員の土井全二郎日本海洋調査会代表を始め、国内で捕鯨支持オピニオン普及に努めた人物たちの名もある。
 2005年度以降で事後評価があるのは、捕鯨支持国のタンザニア、ガボン、セネガルだが、トップに会って一緒に写真を撮り、事業の効果を絶賛する内容になっている。第三者の目から問題点を検証する姿勢はほとんど見受けられない。さらに、プロジェクトとは何の関係もないIWCと当事国との関連に必ず言及している。「言葉の問題もあり、説明された内容が必ずしも的確に研修生に伝わっていない」「研修実施時期と漁期の重複」といった有益なアドバイスが含まれているのは、IWCに加盟していない2003年度のインドネシアのほか、まだIWCに関する記述のない2002年度以前の報告のみである。これでは健全な事業評価とは到底言いがたい。

「有識者評価委員会 評価報告書」(OFCF)

 2007年度の会計検査院の報告の中にも、各省庁所管のODAの援助効果に関する記述がある。そこには、OFCFの技術協力に関して、「(専門家派遣)事業終了後、事業の一部が自立的に発展していなかったりする事態が見受けられる」「供与した資機材が、供与後に十分利用されていなかったり、故障していたりなどしている事態が見受けられた」(1031ページ)と、OFCF自身の自画自賛評価とはだいぶ食い違う所見が示されている。しかし、会計検査院がチェックできるのは、ODA案件全体で年間せいぜい10カ国、合わせて数十件程度が限度である。

「平成19年度決算検査報告 文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省に関する政府開発援助につき、技術協力の実施状況及び技術協力に係る援助の効果について」(会計検査院)

 ここで、(2)で示した<表2>をもう一度ご覧いただきたい。2年間の水産ODA実績のうち、1件当りの金額が10億円を越えているものを赤字で示してある。<グラフ1>に示したとおり、トータルで見ると1国当りの援助額は捕鯨支持国の方が倍以上であるにも関わらず、1件当り10億円を越えているのは捕鯨支持国以外への2件だけである。2006年以前も、捕鯨支持国に対する援助案件は、1件当りの金額が10億円未満ギリギリで踏みとどまっているものが多い。10億円を越える案件の場合、例えば2006年に5.5億円、翌07年に8.7億円と年をまたいだセントビンセント・グレナディーンのオウイア水産センター整備計画のように、複数年に分割して単年度の要求額を抑えるケースが多い。一体なぜだろうか?
 これは、無償資金協力1件10億円以上の案件に対して行われる、第三者を交えた外務省による個別プロジェクトに対する事業評価を避けるためと思われる。なお、水産ODAは、他の一般プロジェクト無償等に対して行われるスキーム別評価の対象には含まれていない。

「外務省のODA評価結果」

■ODA庁費は一体どこへ消えた?

「第170回国会 決算委員会 第2号 平成二十年十一月十七日」
「平成19年度決算検査報告 省庁別の検査結果:農水省」(会計検査院)

リンクは、民主党の牧山ひろえ参議院議員が昨年11月に決算委員会で質問した内容である。
 この中で牧山議員は、ODA庁費のきわめて不明朗な会計処理について触れている。会計検査院の調査で「ODA庁費がODAとは関係ない仕事に使われた」との指摘を受けた対象として、農水省から名前を挙げられたのが、上で取り上げたOFCAである。会計検査院のODAに関する検査結果報告(前項にリンク)の1026ページを見ると、OFCAは、「補助事業に要する経費を適切に算定していなかった」「各事業に係る人件費を実績に基づいて算定していなかった」2度も名指しの指摘を受けている。購入物品の細目や販売元について、牧山議員は再三に渡って農水省に問い合わせたものの、暖簾に腕押しで農水省側はまともな回答を寄越していない。また、同じく省庁別結果の437ページを見ると、「補助の対象とならない賞与、住宅手当等を事業費に含めるなどしていた」とあり、不当と認める事業費は483万円に及ぶ。
 同協会は、農水省による調査事業の調達に際し、同様の能力を持つ企業が数社ある中で1社のみ入札に応じ、そのまま落札している。鳩山総務相がかんぽの宿など国の資産の売却に対して日本郵政の調達の不透明性を槍玉に挙げていたが、中央官庁である農水省のODA関連公共事業の調達に関しても、天下り先法人による単独受注という、負けず劣らず不透明極まりない調達がなされているわけだ。個別のODA事業に関しても、水産ODAの場合入札に応じる企業が特に少ないのは前述のとおりだが。
 会計検査院から指摘を受けた対象には、農水省自身の国際局と農村振興局も含まれている。ODA庁費の使途として自動車借上料(いわゆるタクシー代)があるが、農村振興局でODAを担当する職員は12人であるにも関わらず、局内474人全員分のタクシー代を請求していたというのである。しかも、タクシーの利用者や利用時間の情報は一切公開されていない
 職員から得た証言について、牧山議員は以下のようにコメントしている。

 決済に際しては、それぞれの部署が持つ予算を合算して、ODA以外にいろんな部署がございますが、全部ひっくるめて合算して、各部署で働く人の数で頭割りをして、その金額に見合う経費があれば部署を問わずその経費を適当に当てはめていたという証言を私は質問通告の際に伺いました。非常に驚きました。同時に、このようなことがいつごろから始まったのか、こういうずさんな経理。そうしましたら、昔からこのような方法で、言わばごちゃ混ぜの経理をしていたとも証言をされておりました。ODA予算が本来のODAの仕事以外にこのように長年にわたって使われていたという実態でございます。

 質疑を一読すればわかるが、国会委員会質疑の中でも、副大臣も局長もはぐらかすばかりで、牧山議員の質問内容に対してまったく答えていない。
 追求された議員や国民の皆さんは、ODA庁費がODAとまったく関係ない業務に関する備品やタクシー代にも使い回されたり、あるいはマッサージ機の購入代金や飲み代として消えたのではないかと疑いを持ち、公務員の非常識な倫理感覚を嘆かれるかもしれない。
 しかし、筆者はまったく別の疑念を抱いている。ODA庁費として請求され、不透明な会計処理によってプールされた裏金は、実は他でもないODA関連でありながら大っぴらにできない用途に用いられていたのではないか──と。
 31カ国の〝同盟国〟の多く、特にアフリカの捕鯨支持国にとって、苦しい財政の中で関連費用を支出するのは大きな負担となるだろう。これらの国々に対し、日本政府関係者は年次総会前の詳細なレクチャーのみならず、IWCの加盟分担金から飛行機代やホテル代まで手取り足取り面倒を見る。そのことは(1)でも紹介したとおりである。
 日本政府はそれらの経費を一体どこから、どうやって捻出したのであろうか? 皆さんにも想像がつくのではないか。
 ひとつはっきりしているのは、出所が農水省/水産庁(不透明な経理処理でプールされたODA庁費等)であれ外郭団体(技術協力における不透明な随契調達等)であれ、元はといえば日本国民の税金が使われているということだ。

■それでいいのか外務省

 以下のリンクは、総務省の発表した2008年の省庁間人事交流の状況である。

「府省間人事交流の状況(府省別)」

 表を見ると、農水省からの出向者は298人で国交省に次いで多い。一方、外務省は受入者の数が467人と内閣府を100人以上引き離してトップである。この中でも特に多いのが、農水省から外務省への出向だと思われる。
 霞ヶ関の人事交流は、官民人事交流同様、そもそも縄張にこだわる縦割行政への批判に応え、省庁間の壁を取り払う主旨で採り入れられたものだった。しかし、若い官僚に専門外のキャリアを積ませることより、完全に省益重視で行われているのが、農水省から外務省のIWC/ODA関連部署への出向人事である。他国の外交担当者が辟易するような唯我独尊の姿勢をどれだけ貫き通せたかによって、里帰り後の処遇が決まるとなれば、受入先の都合など顧みずに張り切るのかもしれない。
 日本にとって最も重要な同盟国を含む先進各国を敵視する姿勢を前面に打ち出し、尻拭いだけ押し付ける自省本意の出向者によるお荷物セクションを抱えることが、はたして「緊密な連携の強化」といえるのか。生え抜きの外務官僚にとってみれば、それこそいい迷惑なのではないか?
 それだけではない。ODAは水産以外の産業・科学・文化・教育・環境など多くの分野にまたがっており、外務省はそれらを所掌する各省庁からの要請を受け、調整を担う立場にある。水産庁の捕鯨セクションばかりに特権を与え続ける外務省を見て、不公平な差別を受けている他の省庁はきっと苦々しく思っていることだろう。それは外務省の望むところなのか?
 今年1月に発行された雑誌『WEDGE』2月号に、谷口智彦慶大特別招聘教授の論説記事「メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕・税を投じて友人なくす」が掲載された。谷口氏は同記事の中で、持続的利用論を始めとする日本の主張を大筋で認めつつも、視野狭窄に陥り自制心を見失った国内の非妥協的な強硬論に対して警鐘を鳴らしている
 日本の鯨肉市場の規模はおよそ70億円、同程度の年商を上げる企業は1万社は下らない。海面漁業生産高の1%に満たず、GDPと比較すれば0.002%もない。しかも、調査捕鯨の実施主体である日本鯨類研究所は、昨年度合わせて12億円にまで補助金を増額されたにもかかわらず、8億円弱の経常赤字を出している。水産ODAと密接なつながりのあるOFCFから21億円の無利子融資を受け、日本政府から独占的に調査事業を受注し続けながら、危機的な財務状況にある。多額の国庫補填を受けてなお〝持続的経営〟が成立していないのである。唯一旨味を得ているのは、天下り元の水産庁と結託し、国益を盾に言い値で仕事を受注し続けられる水産ODA関連業界のみであろう。
 谷口氏は指摘する。

 問われているのは、国益の軽重をどう考え、得失の均衡をどこに求めるかだ。勝ち目のない戦いに固執し必要以上の規模で友人を失うことに、筆者は国益はないと考える。(中略)捕鯨に託した日本の国益とは、経済面を見る限り既にあまりに小さい。これが議論の出発点に来るべき認識である。
 

ここで筆者がいくつものグラフを用いて示したのは、担当者も認めているIWC票買収のためのODA活用が、日本の援助外交全体をひどく歪め、多大な国際貢献として歓迎されるべき活動に泥を塗り、国際社会の信用を失墜させているという事実である。これではまるで、日本の外交は水産庁と関連業界、捕鯨議連に乗っ取られているに等しい
 プロの外交官は、大局的判断を下す能力が問われるはずである。
 長期的視野に立った国際協調の重要性をしっかりと認識し、外交上の得失を見誤らない的確な判断を下せるのは、畑違いの他省からの出向者ではなく、外務省自身のはずである。ODAは、各分野・対象国への配分の公平性・公正性と総合的な「広義国益」の観点から見たプライオリティ付けをきっちりと行い、適切に運用されるべきである。特定の1業界の目的のために、国民から託された税金が異常に偏った形で流用されるのを、黙って見過ごしてはならない。白書やデータブックの執筆陣からも外した方がいい。


(5)へとつづく

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