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捕鯨論説・小説・絵本のサイト/クジラを食べたかったネコ

── 日本発の捕鯨問題情報サイト ──

(初出:2008/6)

捕鯨報道・マスメディアランキング

 ここでは、その1)共同船舶社員による鯨肉横領行為を告発したGPJスタッフが6月20日逮捕された事件の報道、その2)6月23日から5日間にわたってチリ・サンチアゴで開かれたIWC(国際捕鯨委員会)年次総会の会期中の報道、その3)8月18日に東京地検がシー・シェパードのメンバーを逮捕状請求・国際指名手配した件の報道を中心に、各マスメディアの取り上げ方をチェックし、結果を表の形でざっとまとめてみました。
 商業捕鯨モラトリアムに危機感を抱いた日本捕鯨協会は、1970年代からPRコンサルタントを雇って新聞各紙の論説委員などを抱きこみ、有用な広報ツールとしてマスコミを活用する戦略をとってきました。ベトナム戦争陰謀説と食文化論のパッケージは右よりのジャーナリスト・論壇に大いに受け、やがて地方紙や機関紙・ミニコミのコラム担当者にまで裾野を広げていきます。こうした協会の周到なプロパガンダ戦略が見事に奏効し、日本の世論は捕鯨擁護よりに大幅に傾いたわけです。
 一例を挙げれば、商業捕鯨最後の年となった1987年、ノーベル生理学賞を受賞した利根川進氏の受賞インタビューの中で、なんとY紙の記者は「知能の高いクジラがかわいそうという主張についてどう思いますか?」という、利根川氏の研究分野とまったく関係のないおよそ場違いな質問をしました。さすがに利根川氏も予想外の質問に面食らったようで、「クジラにはあまり関心がない。むしろサルなどのほうがかわいそうだと思うが・・」と、捕鯨シンパが聞いたら目を剥きそうな感傷的な回答をしていました。せっかくの受賞インタビューだというのに、自身の研究に触れてくれないおかしな新聞記者に、返答に窮した氏の困惑ぶりが目に浮かぶようです。まあ、このやりとりを端折らずに載っけてしまう神経もどうかしているとは思うのですが・・。
 また、財団法人日本鯨類研究所の役員には、産経新聞の元客員論説委員や、TBSの編成局アナウンス部次長といったマスコミ人も一時名を連ねていました。いかにも年間数億円を広報活動に注ぎ込む研究機関らしいといえます。
 捕鯨推進を国策とする政府に加え、第4の権力として行政を監視するはずのマスメディア・言論界までも捕鯨賛成派が主流を占める中、情報が取捨選択され偏った形で国民に伝えられ、それが一連の世論調査などの結果に結び付いてきたことは否めません。ただ、流れは徐々に変わってきつつあります。反捕鯨側の主張を捕鯨サークル側に都合のよい色メガネを通さずに紹介したり、調査捕鯨や鯨肉の過剰在庫、水銀汚染などの問題を客観的な視点から取り上げるところも少しずつ表れ、公正・中立な本来あるべきジャーナリズムの姿を取り戻しつつあります。
 シー・シェパードの妨害やGPJスタッフ逮捕報道で、また捕鯨擁護派メディアが盛り返してきた感もありますが、曲がりなりにも言論・報道の自由が保証された民主主義国家として10:0の危険な状態にまでは陥っていないようです。ただ、残念ながら現段階では、捕鯨サークルだけでなくマスコミに対しても、市民が絶えず目を光らせておくことが依然として必要な状況にあるでしょう。
 というわけで、捕鯨に関するマスコミの報道について、「この番組でこういう取り上げ方をしていた」といった情報がありましたら、ぜひこちらまでお寄せください。

──その1・鯨肉横領疑惑・GPJ職員逮捕関連報道──
順位 メディア 備考
= 新聞部門 =
1位 東京新聞 6/21付解説記事。警察・水産庁/業界サイド、GPサイド双方から距離をとり、複数のアナリストのコメントを紹介、今回の逮捕がもたらす外交上の影響などを客観的に分析。まっとうな報道機関らしい内容。
1位 北海道新聞 6/21付社説【鯨肉窃盗 「調査捕鯨」も問われる】
「内部告発が真実なのか、今回に限らず、過去にさかのぼった徹底調査が必要だ」(引用)
常識の観点からGPを糾弾しつつも、調査捕鯨の問題点について要領よくまとめてきちんと指摘している。公平で優れた社説。
1位 愛媛新聞 6/23付社説【グリーンピース 調査捕鯨の全容を明らかに】
「こうした疑惑を払拭するためにも、船会社と監督官庁の水産庁は、調査捕鯨の全容と持ち帰った鯨肉の流通先を、乗組員の土産分も含めて徹底的に調査し、すべて明らかにすべきだ。 調査捕鯨が税金によって実施されていることを忘れてはならない」(引用)
社会通念の観点からGPを批判しつつも、調査捕鯨の問題点について要領よくまとめてきちんと指摘している。公平で優れた社説。
1位 日刊ゲンダイ 7/8【グリンピース鯨肉窃盗事件の怪しい幕引き】
偏った情報をきっちり補完してくれる彼らのほうが、大新聞よりよっぽど正真正銘のメディアといえるかもしれません。
※ 4紙とも決して捕鯨反対の立場ではありませんが、報道機関として伝えるべき事柄を読者にきちんと伝える客観的姿勢を高く評価したいと思います。
4位 朝日新聞 6/20(夕)。逮捕の正当性に疑問をなげかける識者のコメントを紹介。
5位 毎日新聞 6/20(夕)。GPスタッフとの一問一答を紹介。
日経新聞 6/21。特になし
スポーツニッポン 6/21。逮捕の正当性について、2:1だが、賛否両論紹介。
産経新聞 6/21。逮捕を妥当とする関係者のコメントを複数紹介。
山陽新聞 6/23付社説【グリーンピース 「手段問わず」は許されぬ】
調査捕鯨の問題点には何も触れていませんが、最後のセンテンスはGPにエールを送っているようにも見えなくもない?
最下位 読売新聞 GPの記者会見時も、GP側の指摘の詳細を一切伝えなかった。6/21には早々に逮捕を全面的に支持する社説を掲載(そのくせDAILY YOMIURIには載せなかったらしい)。横領疑惑について検証する姿勢は皆無。
= テレビ部門 =
NEWS23
(TBS)
6/21。特になし
ニュースZERO
(日本TV)
6/21。特になし
ニュースウォッチ9
(NHK)
6/21。GPによる今回の事件と無関係なシーシェパードの抗議時の映像(鯨件提供)を流す。
最下位 報道ステーション
(TV朝日)
6/21。調査捕鯨の問題点に一切触れることなく、キャスター古舘氏の捕鯨擁護論を展開(詳細はこちら)。その他、なぜか事件とまったく無関係な沿岸捕鯨のツチクジラ解体映像まで。
= 雑誌部門 =
週刊文春 6/3号前後に捕鯨擁護記事があった模様。情報求ム
最下位 週刊新潮 6/5号。弱小リベラル政党いじめに利用するのみ・・
──その2・IWC2008サンチアゴ総会関連報道──
記事掲載本数
6/21 6/22 6/23 6/24 6/25 6/26 6/27 6/28
時事通信 1 2 2 2 2 2 1 12
共同通信 1 1 1 2 1 1 1  8
産経新聞 1 1 4 5 3 2 2 18
朝日新聞 1 2 2 1  6
日本経済新聞 1 1 1 1  4
毎日新聞 3  3
読売新聞 1 1 1  3
テレビ朝日 1 1 1 3 1 1  8
日本テレビ 1 1 1 1 1  5
TBS 1 1 1 1 1  5
NHK 1 1 1 1  4
フジテレビ 2 1  3

注1:筆者がインターネット上で確認できたもののみ。内容の変更された更新記事は別途計数。新聞社は独自記事に加え通信社配信記事を掲載した場合も計数。
注2:鯨肉価格値上げ、マルハ下関ビル売却などIWCと直接関係しない捕鯨関連記事も含む。

ランキング (-は同列で順不同)
順位 メディア 備考
= 新聞、通信社部門 =
朝日新聞 6/24、「海外漁業協力財団からの無利子融資の増額を期待している」とは鯨肉値上げに関する鯨研のコメント。
6/25、作業部会設置「同床異夢は変わらない」。小型沿岸捕鯨再開が日本政府の本音なのかもっと検証したほうがいいですね。豪州や南米の「保護機関への変革」と天秤にかけるのは少々おかしいのでは。
6/25、千葉版で和田のツチクジラの初水揚を紹介。
6/26、WWFの主張を紹介(こちら
6/28、閉会後の水産庁次長の談話「第二の道も考えなければならない」
毎日新聞 6/24、鯨肉値上げについて、妨害行為に加え「燃油代の高騰などが原因」(引用)。産経記事と比較してみましょう。
6/24、下関旧大洋漁業ビル売却(下関版)。「下関くじら食文化を守る会」会長のコメント紹介。
日経新聞 6/24、鯨肉値上げについて「燃油価格の高騰でコストが上昇しているうえ」(引用)。産経記事と比較してみましょう。
共同通信 6/21、事前に日本が期限通告をしたと報道(担当者は否定)。
6/24、クロミンククジラの個体数について合意が得られなかったことを報道。
6/26、IFAWのDNAチェックによる違法流通の指摘を報道。
下から3位 信濃毎日新聞 6/29日付社説【国際捕鯨委 対立をほぐすために】
いかにも社説らしい概括ですが、中日より若干マシかも。ただ、ヘンな記述もちらほら。「隙のないデータに基づいて」(引用)いや、農水省の担当者さえ調査捕鯨の科学性は5、60%というほど隙だらけだし。「反捕鯨国には、世界の食糧事情や捕鯨の伝統にも目を向ける姿勢を求めたい」(引用)ていうか目を向けてるし。こっちも隙だらけだってわかってるし。「IWCはいよいよ解体の危機に直面する」(引用)解体を叫んでるのはどっかの国とSSくらいなんですけどね。
下から3位 読売新聞 6/22(夕)、論説委員のしょうもないコラム掲載(詳細はこちら
6/24、下関旧大洋漁業ビル売却(九州版)。「鯨の産業遺産が消えるのは大変寂しい」といった市民の惜しむ声を紹介。
下から3位 時事通信 やや捕鯨より。本数も12本と産経に次いで2位。
6/23、〝土産〟の透明性確保必要との農水次官のコメント。
6/25、「食料安全保障の観点」を唱える"同志"セントキッツ代表のコメント。森下氏、「考え方が違う部分もあるが・・」っていいのかね、言っちゃって・・。大隈氏怒りませんか?
6/26、「NGO、初の晴れ舞台」。実際には四半世紀前にあったので初じゃないとのこと。3:3だったのに、記事の扱いは反捕鯨派がGPのみで3:1に・・。
ブービー賞 中日新聞 6/27付社説【IWC総会 正常化へ動き始めた】
とりたててパッとするところのないヨイショ論調。「大局的な判断」って都合のいい言い回しだけと、これって連発するとカッコ悪いよね。
捕鯨ヨイショに孤軍奮闘したで賞 産経新聞 記事が共同分も合わせて17本と他紙より圧倒的に多く、長い解説やヒト紹介コラムなどの特集記事も。その分記者の主観的記述が非常に多くなっています。
6/24、GPの抗議集会に参加したホガース議長に対し、「日本の味方のハズなのに(泣」と言わんばかりのどこかズレた報道。「GPの影響力を誇示する形となった」との注釈も。
6/24、鯨肉値上げを全面的にシーシェパードの所為に押し付けている。
6/24、【「妥協」求め路線転換…正念場迎えた日本 IWC総会開幕
保守系紙らしく「一歩も引かず」「モノを言う外交」「毅然とした態度」と勇ましい言い回しが踊っていますが、「国内の世論も強硬論で固まりつつある」(引用)とする根拠は何一つ示しておらず。願望を勝手に事実にしないでほしいもの。最近激しい多数派工作を仕掛けてきたのは専ら日本側でしたが、ドミニカがもう出ないと言っていることなどには触れず。妥協路線といっても、日本側が何にも譲歩しなきゃ「妥協路線」にならないのは自明。また、「ハトタカ」という例えもおかしいけど、反捕鯨国のスタンスの違いは以前からで、分裂なんてしていません。
6/25、「今日は何の日 ナガスクジラ捕獲禁止」日本の責任の大きい乱獲に一言も触れず。
6/25、【ハシゴ外された? 豪などにフラストレーション】
「怪気炎」をあげる人たちは、永田町のこの間の鯨肉パーティーにもたくさんいたはずですが。それにしても、豪州のメディアの反応を見ると、やっぱり北朝鮮と同列だと思われてるみたいですね。
6/26、「NGOなどが賛否を表明」賛成派と反対派の扱いは時事と同じ比率。しかも、GPの主張とは関係ない逮捕の件でスペースを埋めたのでさらに半分。
6/26、「来日中の豪外相、妻のクジラ料理を拒否した鳩山氏を称賛」(引用)。ついでに民主党の株を下げる意図があったんですかねぇ。鳩山さん、大変ありがたいのですが、もうちっと違う形でウィットの感覚を発揮してください。
6/27、鯨研のスポークスマンを務めるNZ出身グレン・インウッド氏を紹介。研究機関のスポークスマンが「サムライ」でいいの??
6/28、「組織的な反対で否決」(引用)どのみちお互い様のはずですが、取材による具体的な裏付けがあったのですか?
同6/28、最後のまとめもふるってます。毎度折込済みの沿岸捕鯨再開の要求を〝しなかった〟こと(やったら議長裁定無視そのものじゃん)や、「中間会合で一度通してんのに二度手間かけても意味ない」というだけのSS非難声明の採択〝をもあきらめる〟ことが、記者殿にとっては大幅な譲歩なんだそうな。「そうまでして」って、まるで断腸の思いで百歩譲ったみたいなこと書いてるけど、まったく開いた口が塞がりません。
「いよいよIWC脱退というシナリオも現実味を帯び始めることになる」(引用)非現実的なシナリオが現実味を帯びることはありません。NPTじゃないけど、そうやって北朝鮮とそっくり同じ道を歩み始めるつもりなの? ていうか、既にあそこの国営テレビそっくりだけど・・。
= テレビ部門 =
NHK 6/28、閉幕のニュース「日本は・・再開を目指す方針で」「反対派も・・自らの主張を通そうと狙っています」(引用)
「日本は自らの主張を通そうと狙っています」「反対派も多数の問題点が浮かび上がった致死的調査の中止を目指す方針です」ともいえること。中立公正な公共放送がそれでいいんですか?
TBS 6/23、デモ報道の中で反捕鯨派の活動が「問題となっている」としつつ、調査捕鯨の問題点には触れず。
6/25、作業部会設置「これで日本の要求がすんなり通るとは考えにくく」(引用)。当たり前じゃん。
6/26、日本の調査捕鯨レクチャーを報道。内容はあまりなく、日本側の思惑は伝わらなかったかも・・
日本TV 6/24、シーシェパードのワトソン船長のコメント。よそのNPOや科学者のもっと有益なコメントを拾ってほしいんだけど・・
6/24、作業部会設置、森下氏の長いコメント。「日本にとって悲願の沿岸小型捕鯨をテーブルに乗せることに成功した」(引用)・・・。
6/26、逮捕に対するGPドイツの抗議行動を報道。
ANN 6/25、作業部会設置、森下氏「がけっぷちで踏みとどまり」局でコメント拾うとこいろいろ・・。
6/26、「豪がシー・シェパードを捜査対象に」フジサンケイはとりあげないんですかね。
6/28、「反捕鯨国の世論は強硬で」捕鯨国の世論は強硬ではないのですか。
FNN 6/24、「日本としては、沿岸小型捕鯨再開への道筋をつけたいところ」(引用)調査捕鯨(共同船舶)のダシにされる可能性が高いんですけどね。
6/25、ワトソン船長の「日本のIWC脱退要求」。見出しをこっちにするのか・・部外者なのに。
──その3・SS逮捕状請求関連報道──
順位 メディア 備考
= 新聞、通信社部門 =
1位 信濃毎日新聞 8/19、社説【調査捕鯨妨害 捜査は理解を得ながら
「日本政府は各国に、なぜ、本格的な捜査をする事態に至ったのか、説明する必要がある。国際社会から理解を得られるよう、慎重な捜査をしなくてはならない」
「シー・シェパードはこの事態を重く受け止め、抗議のあり方を見直すべきではないか」(引用)
IWC総会時の社説に比べかなりマシに(社説らしい作文調は抜けてないけど)。最後にSSに対して付けたもっともな注文は、右翼迎合的シュプレヒコールと違い至極まとも。
共同通信 8/17、【調査捕鯨妨害で逮捕状請求 シー・シェパードの3人】
警視庁公安部の発表を短く伝えるのみ。
8/18、【捕鯨船妨害容疑で逮捕状 ロープ絡みスクリュー変形】
「投げ込まれたロープや網などは南極海に残されたままで、環境汚染の原因になる可能性がある」という鯨研のコメントを載せていますが、解体時や投棄による海洋汚染、大量の温室効果ガス排出など調査捕鯨自らによる環境汚染に触れていない点で公平を欠きます。
8/19、【反捕鯨の抗議継続を宣言 捕鯨妨害の団体】
ポール・ワトソンの声明を短く伝えるのみ。
時事通信 8/18、【米英活動家3人に逮捕状=シーシェパード、捕鯨妨害容疑-国際手配へ・警視庁】
警視庁公安部の発表を短く伝えるのみ。
8/19、【「ばかげている」妨害継続宣言=警視庁逮捕状で-米・反捕鯨団体】
ポール・ワトソンの声明を短く伝えるのみ。
筆者はSSの行動は支持しませんが、「ばかげている。逮捕状は何の影響も与えない」「なぜ幹部でもない3人の乗組員を対象にしたのか理解できない」「シー・シェパードのすべての活動は、わたしの命令と責任に基づくものだが、わたしに対しては何の容疑もない。逮捕状は無意味だ」という彼のコメント自体は確かに的を得ていますね。
同8/19、【オランダ人の女も関与か=発煙筒で捕鯨妨害容疑-シー・シェパード事件・警視庁】
見出しがセンセーショナル・・ていうか、週刊誌のノリだよね。
日経新聞 8/18(夕)、【調査捕鯨妨害、米英国籍の3人に逮捕状請求 警視庁】
18面。警視庁公安部の発表を短く伝えるのみ。
東京新聞 8/18(夕)、【調査捕鯨妨害で逮捕状 シー・シェパードの3人 警視庁請求】
警視庁公安部の発表を伝える。SSの解説あり。
下から3位 北海道新聞 *SS逮捕状請求報道は共同配信
8/20、卓上四季【捕鯨妨害】
どこにでも転がっている記者コラムらしい内容。まあ確かに、SSは日本文化をクールだと勘違いしている愛日外国人ぽいけど。独り善がりが目立つのは日本の捕鯨推進政策も同じはず。
8/23、社説【調査捕鯨妨害 摘発だけでは不十分だ】
「日本政府は科学的なデータに基づく粘り強い説得と、歴史ある鯨食文化に国際理解が得られるよう一層の努力が必要だ」(引用)
GPJ職員逮捕時報道とは打って変わって鯨研側の主張の垂れ流しで、産経社説と大差なし。
下から3位 朝日新聞 8/18(夕)、【捕鯨船妨害容疑、米英3人に逮捕状 警視庁、国際手配へ】
夕刊1面トップ記事(鯨研発写真はなし)。
8/19、【「調査捕鯨抗議は継続」 シー・シェパード代表表明】
ポール・ワトソンの声明とSSのHP上の記述を短く伝えるのみ。
8/19、社説【捕鯨妨害―この摘発は当然としても】
「摘発すべきは摘発するとしても、それは捕鯨の是非の問題と絡めてはいけない。反捕鯨活動への弾圧と受け取られるような捜査になっては、反捕鯨国から無用の反発を招きかねない。
日本が捕鯨を続けようというなら、クジラを捕ることは一つの文化であり、資源保護にも反しないことをもっと粘り強く訴えていく必要がある」(引用)
新聞の社説は2、3人の論説委員が切り貼りしてやっつけで作り上げるもんですから、国語的にはメチャクチャなことも別段珍しくはないのですが、直前のセンテンスと真っ向から矛盾する記述を平気で盛り込むのはさすがに珍しいですね。全体としては比較的バランスの取れた内容だったにも関わらず、最後の一文で何もかもが台無しです。他にも、「クジラを食糧などの"資源"と見る日本などの捕鯨国」「クジラを捕ることは一つの文化であり」(引用)という矛盾した記述が同居していたり。
また、「反捕鯨団体の活動が先鋭化するのも、こうした反捕鯨感情に支えられてのことだ」(引用)とありますが、先鋭化する原因を作っているのは、JARPAⅡの強引な増産やザトウ捕獲など捕鯨ニッポンの強硬姿勢・唯我独尊的拡張路線に他なりません。
8/20、【捕鯨妨害の被害語る「液体浴び、腕が腫れた」】
被害をことさら強調する内容。非はもちろんSS側にありますが、全員軽症のはずですから記事の扱いとしてはオーバーにすぎます。死者を出した日新丸の船上火災やクレーン事故、今年のJARPN出港間際の自殺などについて、なぜ朝日は大きく報じなかったのでしょうか。
下から3位 読売新聞 8/18(夕)、【捕鯨妨害国際手配へ シー・シェパードの3人】
夕刊1面トップに反転見出しで登場、大飯の原子炉損傷やグルジア関連記事(白地に黒字)に比べても不可解なほど大々的な取り扱い。「エコ・テロ日本を標的」と15面でも鯨研提供写真付で関連記事に大きくスペースを割いてます。
初の「海洋航行不法行為防止条約」適用ということで詳細な解説を載せていますが、「最初に逮捕ありき」で、日本の捜査権が及ばないため一種の"裏技"を駆使してかなり強引にこじつけたというのが真相であり、初適用になるのはある意味当たり前。
「SSに対する国際社会の圧力は年々強まっており」とあるが、記事にあるIWC中間会合の非難決議は淡々と処理されただけで、海外では別にたいした報道にはなっていません。国内の保守派が過剰反発してるだけ。あえて"国際社会の圧力"という表現を使うのであれば、年々強まっている調査捕鯨に対する圧力を取り上げないのは片手落ち。
8/19、【調査捕鯨妨害 6人が関与】
国務省の報道担当官に別途取材。対北朝鮮と同じとまで言わずとも、一種のリップサービスですね。
8/19(夕)、【シー・シェパードは捕鯨妨害継続の声明】
他紙と異なり、ワシントン支局発であるにも関わらずワトソン氏の声明と関係ない記述が。
「日本の調査捕鯨は、鯨の生息数や生態系などを調べることが目的で、国際捕鯨取締条約で認められている」
まあ、"目的"は事業主体が言えば目的になりますが。「調べる方法は他にある」「ほとんど役に立ってない」という世界中の科学者から指摘を受けている点や、何より"副産物"という真の目的について一点も触れていない点がミソ。
事件と直接関係ない脚注を最後に付けるのであれば、条約の抜け穴が杜撰な調査捕鯨に利用されている現状を変えるための改正の動きがあることも、公平に伝えるべきでしょう。これでは水産庁・鯨研の利益を代弁しているも同じ。
8/25-(夕)、連載記事【明日へ・クジラと生きる】
房総ツチクジラ水揚や文楽人形など、いずれも耳タコの捕鯨文化論の繰り返しで目新しい話は一つもなし。これも毎日のラマレラ記事と同じく、今回のSS記事と関連付けて国民の捕鯨支持シフトを狙うものであることは間違いないところ。
最下位 毎日新聞 8/18(夕)、【調査捕鯨妨害:シー・シェパードの3人を国際手配 警視庁が逮捕状】
夕刊1面。警視庁の発表に詳細な解説を加えている。SSの解説もあり。
同関連記事【調査捕鯨妨害:シー・シェパード国際手配 西脇茂利・船団団長「資金のため過激行動」】
妨害活動については、帰港後の記者会見を始め再三にわたって取り上げられたはずですが、何度でも繰り返して印象付けたいようですね。西脇氏の一問一答はかなりツッコミ甲斐のある内容。
同解説記事、【シー・シェパード:国際手配、日本が内外に厳しい態度示す】
「捜査機関のき然とした対応は当然だが、政府が外交ルートを通じて関係各国に、SSの船に使用する港を与えないよう働きかけを強めることが必要だ。また一方で、捕鯨に国際理解が得られるよう一層の政府の努力を望みたい」
他国の港の使用認可に口を出す権利は当然ありません。理解を得たければ、調査捕鯨の私物化疑惑について他国に口を挟んでもらうことが先決では。「捕鯨への賛否と暴力による妨害行為の是非は峻別して考えるべきだ」という産経の指摘は毎日の記者に対してもいえますね(産経自身に対してもだけど・・)。
7/8、【質問なるほドリ:「グリーンピース」ってどんな団体?=回答・棚部秀行】
上の記事に何故か張られていた"関連"記事。どうせSSと直接関係のないGPの、記事でも何でもない新聞社側が勝手に書いた一般的なQAコーナーに引っ張るなら、調査捕鯨の様々な疑惑に直結する横領告発時の記事にリンクすべき。GPに関するわずかなQAでSSとの関係にわざわざ1項目当てていると思ったら、上記のように「捕鯨への国際理解」を自ら唱える棚部氏が担当。SSのQAにGPが出てくるならまだしも、GPから分派した組織など他にいくらでもあるのだから、SSのみ取り上げるのは明らかな偏向といえます。
8/19、【調査捕鯨妨害:シー・シェパード国際手配 体当たり計画か、無線飛行機で襲撃狙う】
他社や通信社がワトソン氏の声明を伝える中で、かなり誘導的な記事。見出しでいきなり「体当たり」とあると読者はビックリするでしょうが、ラジコンを積んでいた"かもしれない"というだけの話。今回の立件とも直接関係はありません。
関係者というのは警視庁公安部でも、当のSSでもなく、どうやら鯨研・共同船舶側の人間のようです。「調査捕鯨の関係者」と明記もせず、出所のはっきりしない甚だ信憑性に欠ける内容と言わざるを得ません。
実行犯の特定・IPCOへの指名手配は他社記事と同じ内容で、毎日は独自色を付け加えたつもりのようですが、出だしから結論までの間に別のトピックをミックスし、情報源と警察発表との区別も曖昧にするやり方は、ジャーナリズムとしてきわめて問題。
8/26-28、連載記事【揺れる捕鯨の村:インドネシア・ラマレラから】
ラマレラはいわば近代捕鯨を拒否して古式捕鯨の道を貫いた伝統文化の優等生で、自分から捨て去った日本のような脱落者とは完全に一線を画します。記者の解説は日本の捕鯨擁護論そっくりとはいえ、日本の捕鯨文化そのものにあえて言及しなかったのは賢明かも。それでも、NGOの運動とはまったく無関係な鉱山開発を記事中に無理やりねじ込んでおいて、先進国の一方的都合で現地の文化と生活を破壊する典型例というべき日本のIWC票買い水産ODAには一言も触れていません。何より、当該環境保護団体の活動は別に今に始まったものではないはずで、タイミングを狙ってSS報道にぶつけたことは明白でしょう。GPが裏で糸を引いていると言わんばかりの書き方も。
最下位 産経新聞 8/5、【捕鯨船妨害 きょうにも逮捕状請求 米国人活動家ら特定】
実は産経は他紙に先駆けて「方針を固めた」という"関係筋"情報を流していました。その後当局側が実際に請求するまでに2週間もかかったのか、マスコミが大きく取り上げられるタイミングを見計らっていたのかは定かでありませんが・・。
8/18、【調査捕鯨妨害でシー・シェパード3人の逮捕状請求 警視庁】
鯨研提供の写真を掲載し他紙よりスペースを割いています。
8/19、社説【調査捕鯨妨害 立件こそ最大の抑止策だ
信濃毎日新聞の落ち着いた論調と対照的な、まさに右翼迎合的シュプレヒコールそのもの。さすが鯨研・業界とコネのある偏向メディアといったところ。
捕鯨批判を文化の違いに勝手に集約してしまい、調査捕鯨にもCITESなどの国際条約に違反している疑いがあることや、科学性への疑義、"副目的"(誰もが知ってのとおり、主/副は実際には逆)への批判にまったく触れられていません。また、相手が先手だろうと「生命を脅かす危険行為」をあえて強行したのは調査船団側も同じ。ワトソン氏の心臓は毛が生えてて警告弾じゃびくともしなさそうだけど。
おもしろいのは、いかにも産経らしい米英すりより視点。そりゃま、捜査協力は言われれば淡々とやるでしょうよ。
「捕鯨への賛否と暴力による妨害行為の是非は峻別して考えるべきだとする判断があったからだろう」(引用)
米英が大人なのに対し、日本政府やマスコミには"峻別"する能力がないらしく、どうしても捕鯨擁護の材料にしたいという思惑は、「今後も捕鯨への理解形成に最大限の努力を続ける必要があることはもちろんだ」(引用)といったこの社説の記述からも見え見えです。
立件が最大の抑止だと言い張っていますが、SS側は(仮に)逮捕されれば最大限活用すると言っているし、これまでSSの抗議活動を単なる募金目当ての広報だと訴えてきた捕鯨ニッポンにしてみれば、逮捕して彼らをさらに目立たせるのは実に不合理な誤った判断といえるでしょう。実際のところ、SSへのエールがさらに勢いを増すことは避けられません。
「関係国に対しても犯罪人引渡条約の有無にかかわらず、毅然と容疑者の身柄拘束、日本への引き渡しを求めるべきだろう」(引用)と、ここへ来て「法治国家」「人権国家」らしからぬ威勢のいいコメントが飛び出しますが、条約の"裏技"を使ってSSをしょっぴくより、GPIの窃盗共助犯の身柄要求をするのが先でしょう。というより、途中で放り出した鯨肉横領・横流し容疑の再捜査がまずあって然るべき。
誰にもわかる「再発抑止策」は、南極での調査捕鯨をやめること。
8/20、【シー・シェパード、救難信号後も妨害】
NZ様々ですね。SSの行動自体は非難されて然るべきですが、海幸丸の航行不能は一時的なもので、その後操業を再開し、曳航されるでもなく自力で帰港したのでは。何故か零戦(?)ラジコン模型の記事を繰り返しているし。何度も強調するのが"コツ"なんですかね。
= テレビ部門 =
TBS 8/18、【「シーシェパード」3人の逮捕状請求】
8/19、【調査捕鯨妨害、実行役は他にも3人】
映像は鯨研提供。
FNN 8/18、【「シー・シェパード」調査捕鯨船妨害事件 威力業務妨害容疑で活動家3人の逮捕状請求】
8/19、【「シー・シェパード」捕鯨船妨害事件 船長、今後も妨害活動を続ける考え示す】
ワトソン氏へのインタビュー。
最下位 NHK 8/18、【調査捕鯨妨害3人国際指名手配へ】
午後7時のニュースで鯨研西脇氏のインタビューを放映。
「逮捕者が出ましたというのが1つのステップだと思うんで、次はやっぱ逮捕、シーシェパードとかこういう環境テロリストの撲滅にまい進していただきたい」
ここぞとばかりに"証拠品"まで用意して力説する西脇氏のパフォーマンスぶりには、さしものワトソン氏も顔負けでしょう。マスコミを最大限活用したプロモーションといえるが、従軍慰安婦裁判報道と同様に圧力をかけて枠をとったのかは不明。SS側もワトソン氏が声明を出したが、これについて公平に取り上げたかどうかは未確認。
(情報提供:赤いハンカチさん)

※ 参考:
 Greenpeace のメンバー逮捕の社説を英語版にしないナベツネ機関紙|flagburner's blog(仮)
 「実はそっくり、シーシェパードと捕鯨ニッポン」


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