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徹底検証！　水産庁海洋生物レッドリスト：要約版

＝　詳細版　＝

（2018/3/19更新）

＜前半：総論＞
            

＜後半：真・レッドリスト（鯨類編）＞
            

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１．「DD（情報不足）」および「ランク外」カテゴリーのIUCN非準拠

• 日本版のカテゴリー「DD（データ不足）」はIUCNに準拠していない。IUCNではNT（準絶滅危惧）が妥当とされる種を含めたり、DDが適用される種が除外される。
• 日本版の「ランク外」はIUCNにはない恣意的なカテゴリーで、定義に整合性がない寄せ集めの状態。積極的にその「ランク外」判定が行われたのが今回の海のレッドリスト。

２．基準E優先と独自規格の準基準E

• 可能な限り多くの基準で評価し、予防的な判定を採用するIUCNと決定的に異なり、日本版はA～Eの5つの基準のうち基準Eを優先し、基準A～Dの判定を省略できてしまう。
• IUCNは豊富な実例と理論的根拠に基づき基準Aを特に重視しているが、水産庁は基準Aより基準Eを優先する理由を「最も直接的」「合理的」の一言のみで片付けている。
• 基準Eは机上のシミュレーションにすぎず、データの精度に大きく左右される。他の基準より予防的でない場合が多いなど、IUCNは問題点を挙げている。
• 「準基準E」は日本独自の基準であり、基準Aと同じデータを用いながらランクを大幅に下げる特性がある。さらに、一部の魚種では基準Eより準基準Eが優先された。

（詳細）

３．反予防原則

• IUCNは再評価の際にはすべての基準で判定し直すことを求めている。しかし、水産庁は哺乳類学会や過去の水産庁自身による小型鯨類の再評価でこの指針に従っていない。
• IUCNガイドラインは漁業対象種の特性を理解しつつ、多くの特記事項を設けている。持続的漁業においては開始から3世代以内に減少が止まるはずで、その後も減少が続く場合は懸念がある。漁業に依存しない調査による評価が望ましい。非持続的漁業が誤って持続的であると判断される可能性を考慮する、等。水産庁はそれらリスクの過小評価に関する指摘をすべて無視し、「付加的事情の考慮」としてダウンリストの要件ばかりを掲げた。
• 再生産力の低い種への配慮というアップリスト要件は、アブラツノザメやツチクジラ、オキゴンドウ、シャチ等該当する種に対して実際に適用されることはなかった。
• 「付加的事情の考慮」の過程では、定量基準に基づくカテゴリー案を恣意的な定性要件であっさり覆すことを可能にしており、基準E優先主義とも真っ向から矛盾する。
• 基準E/準基準Eで絶滅危惧判定が出た5魚種は、この定性的な「付加的事情の考慮」に基づきすべてダウンリストされた。ナガレメイタガレイのケースでは、手順に従い「判定に必要なデータがある」として基準E/準基準Eを適用したものの、VU判定が下りてしまったため、「判定に必要なデータがない」と判断を翻した。手順としての意味がない。
• 水産庁手引には漁業対象種の適用例としてFAOガイドラインを参照したケースが紹介されているが、実際のレッドリストでは一顧だにされなかった。
• 気候変動の考慮がなされていない。
• 鯨類29種のうち25種は脅威「なし」「とくに考えられない」とされ、IUCNの評価と大きく食い違う。

４．水産庁によるレッドリストの政治利用の弊害

• 捕鯨協会は小型鯨類の管理をIWC等国際機関ではなく日本が担うべき理由に、沿岸性で系群が分かれていることを掲げたが、今回のレッドリストは「系群不明」のものがほとんどで、また判明しているものも個別の評価を省略しており、従来の主張に反している。
• 渡り鳥とヒゲクジラ、ジュゴンとスナメリの基準問題。
• 近海の漁業資源の半数が枯渇状態にある現状に対し、「絶滅の恐れがないのだから、乱獲ではなく、規制の必要もないのだろう」との誤った印象を漁業者や消費者に植え付け、無策を放置する口実を与えかねない。
• 海外と比較した日本の、あるいは環境省と比較した水産庁の保全策が相対的に進んでいるかの如き誤った印象を与えかねない。
• ニホンウナギ等環境省陸域版、あるいは、イカナゴ、スナメリ等、都道府県の評価結果が異なる場合、水産庁版への同調を求められる強い懸念がある。

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日本周辺水域に生息する小型鯨類のレッドリスト評価一覧

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