ENGLISH

捕鯨論説・小説・絵本のサイト/クジラを食べたかったネコ

── 日本発の捕鯨問題情報サイト ──

(初出:2002/9)

不正日ハムv.s.PCB鯨肉

伝説のホエールズv.s.ファイターズ戦
しまった、牛は近鉄だ! ていうか、いまは横浜じゃん。。。

 2002年8月8日の報道で、北西太平洋で調査捕鯨により捕獲されたミンククジラの脂皮から国の基準値を越えるPCBが検出されていたことが判明しました。実施主体の鯨研によれば「さらし加工にすれば安全」とのこと・・。
 5頭の抜き取り検査のうちの4頭が基準値を上回っていたとのことですから、メチャメチャ高い確率です。鯨類が有機塩素を蓄積しやすいことは前々から知られていたことで、今さら驚くには値しませんが、汚染が広く行き渡っていることが図らずも明らかになったわけです。
 この一報で、市場からさらし鯨以外の鯨肉(脂身)が一掃されることになるのでしょうか? ブンカだゲージツだと吠えてる人たちは、いくら健康に有害だと言われようと、レパートリーが減ること自体我慢がならないという人も出てきそうです。
 加工業者とは〝信頼関係〟で成り立っており、誓約書も交わしているそうですが……一連の狂牛病騒動を目にしていると、何とも白々しく聞こえます。(信頼と口にしつつ)市場での抜き打ち調査も検討しているといいますが、ネット販売まで行われているご時世に、市場に出回っている全ての鯨肉が安全だという保証がどこまで得られるでしょう? 農水省と畜産・食品メーカーとの間に〝信頼関係〟がまるでなかったわけではありますまい。むしろツーカーの間柄だったからこそ、見えないところで補填金流用のような不正が行われたわけですし。

 今回、内部文書がマスコミにスッパ抜かれるまで汚染の実態を一切公表しなかったことについては、「厚労省の研究途上だから」と理事の弁。研究班の調査結果が出るまで、高濃度の汚染物質を含む食品が、学校給食を含む食卓に上っていた可能性が高いことを、ずっと伏せておくつもりだったわけです。「後で公表するつもりだった」とはお決まりの弁解文句。その間ずっと国民をリスクに晒し続けてきたことを、〝後で〟どうやって説明するつもりだったのでしょう? クジラと日本人とは特別な歴史的関係にあるのだから、たとえ汚染されていようが健康被害は起こらないという結果が出ることでも期待していたのでしょうか? いえ、公表する気など端からなかった、隠すつもりでいたことは明らかです。
 「毒入りだけど、さらして薄めれば大丈夫。薄めるぐらいで平気なら、わざわざそれを言う必要もない」という関係者の感覚には背筋が寒くなるばかりです。これまで後手後手で〝健康被害の実績〟をいくつも築き上げてきた医薬品・食品行政の体質が如実に表れています。情報公開の流れへの逆行、業者とのツーカーの〝信頼関係〟、調査事業といっても委託先はいわゆる役人の天下り先となる公益法人。多額の税金が不採算の捕獲部門を補填する形で投じられる一方、市場での販売実績を持つ特定の業者が旨みを得るわけです。国・マスコミ・著名人の応援団が広告費を肩代わりして付加価値までつけてくれるオマケつき。信用の地に堕ちた日ハム・食肉業界を、はたして対岸の火事と眺めていられる立場なのでしょうか?

 捕鯨関係者の場合、作られた世論の支持をバックに、そうした隠蔽体質・癒着体質を続けられるという算段があるのでしょう。確かに、鯨肉の消費者と捕鯨支持者は重なるわけですが、鯨肉の安全性情報の秘匿は、とりもなおさず支持者に対する裏切りを意味します。
 悲しいかな、今や行政やメーカーの言うことを鵜呑みにしていては自分と家族の健康を守れない時代になってしまいました。頭を使って自ら情報を集め、感覚を磨くことが要求されています。「頭が良くなる~♪」とムードに流されるばかりでは、リスクを減らすことなど到底できやしません。
 みなさんはこの不誠実さを目にしても、まだ鯨肉の安全性に絶大な信頼を寄せますか? 伝統食文化を建前にした業界の存続のために、喜んで身を投げ出しますか──?

《参考リンク》
 鯨由来食品のPCB・水銀の汚染実態調査結果について|厚生労働省


社会科学系


自然科学系

旧JANJAN掲載記事
ページのトップへ戻る